酸素魚雷
日本海軍艦艇図鑑
6.11 「超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑」
歴史群像編集部編
2020年 9月04日 発行
学研
過去に歴史群像で取り上げられた旧帝国海軍艦艇の外観や構造の図解をまとめたもので
ある。
『軽巡・駆逐艦』の章で、「[図説]九三式魚雷の構造」(イラストレーション:大澤郁甫)
として見開きで掲載されている。
九三式魚雷の内部構造を立体的に表現した画期的な図説、と言いたいが、よく見ると奇
妙である。
呉市の『大和ミュージアム』には、九三式魚雷の後部が置かれてあるが、2つのクランクケー
スがスクリュー回転軸カバーを挟み込むように配置されていることが判る。
そこで本稿では、九三式魚雷の駆動機構は、「単気筒の往復動クランク式ガス圧モータ」を
並列に配置し、中央部にある傘歯車機構で出力軸を直角に変換してスクリューを作動させ
る、と解析した。
ところが、「日本海軍艦艇図鑑」に記載の九三式魚雷の構造イラストでは、いわゆる「シリン
ダー」がひとつしか描かれておらず、細部の機構も大和ミュージアム展示の現物とは大きく異
なっている。
ところで、下の図は、オートバイのシャフトドライブ機構の説明図(引用:「バイクメカニズム
図鑑 改訂版」 出射忠明 グランプリ出版)である。
横置きにしたエンジンの出力軸の回転が、前側の傘歯車で直角に曲げられてドライブシャフト
を回転させ、そのドライブシャフトの回転が、さらに後側の傘歯車でもう一度直角に曲げられて
後輪を駆動する機構となっていることが、3次元的に明確に表現されている。
一方、[図説] 九三式魚雷では、『シリンダー』と『主軸』の回転方向が直角になっているが、
どのようなメカニズムによって、回転方向を変更しているかはまったく判らない。
また、二重反転スクリューを動かすための機構も見当たらない。
さらに、良く見ると、魚雷の「ひれ」が縦横配置ではなく、X字配置に見える。
「縦ひれ」の上側には、魚雷発射管内の上部にあるT字断面の「導溝」と嵌合する「導子」
が付いているが、X字配置では、導溝と嵌合できないことになる。
結局、この図は、従来から発表されている九三式魚雷の断面図を立体っぽく描いているよ
うにしか見えない。しかも、斜めに傾いた状態で描いてるため、「ひれ」の配置がX字形に見
えるのである。
立体形状で表現するメリットは判りにくい構造を視覚的に理解しやすくなることであるが、そ
の意味がないのであれば、わざわざ、立体っぽく描く必要はない。
資料の正確さという点で、やや問題がある、と言えるだろう。
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