酸素魚雷

日本の駆逐艦










    6.4  「軍艦メカニズム図鑑 日本の駆逐艦」 森恒英著 グランプリ出版 1995年 1月12日

   
   著者:森 恒英
   発行:グランプリ出版
   初版:1995年  1月12日

「8.水雷兵装 《1》 魚雷兵器」(248ページ)で、魚雷の解説をしている。

>通常、魚雷の駆動は、圧縮空気で動くレシプロ機関によるものであったが、圧縮空気の気
>泡が雷跡として残る欠陥があったため、日本海軍では、無航跡魚雷の開発が極秘のうち
>に進められ、世界にもその例のない酸素魚が1933年に完成した。


 疑問 4.1:蒸気タービンが発明される前は、船舶用に蒸気レシプロ機関が使われていた。
           ちなみにあの戦艦「三笠」も蒸気レシプロ機関である。

                 しかし、大出力機関として、蒸気タービンの採用が一般化するにつれて、蒸
                 気レシプロ機関はほぼ絶滅態となり、その後、レシプロ機関といえば、ガソリン
                 エンジンやディーゼルエンジンを指すようになった。
                 ここで述べている『圧縮空気で動くレシプロ機関』とはいったいどちらであろうか?

 疑問 4.2:魚雷は、ホワイトヘッドが発明した空圧モータ式の第一世代、ブレイトンエンジン
        使った第二世代、ガス圧モータ式の第三世代、そして、第四世代の酸素魚雷
         という流れを見ることができるが、この説明では、第一世代から一気に第四世
         代に進化した印象を受ける。ウソではないが、中間の紆余曲折を省くと、誤解
         を与えかねないのではないか?

  また、同書249ページには「(1)魚雷各部の名称」として、魚雷の断面図が記載さ
  れている。





 「図8-2 魚雷各部の名称(保式加熱魚雷)」 という図のタイトルから察すると、ホワイト
 ヘッド社の魚雷について説明したものと推察できる。
 図の中に「加熱装置」と称するモノが描かれているので、「加熱魚雷」なのであろう。

 しかし、文章では「レシプロ機関」と呼称しているが、元々ガソリン、ディーゼル機関に加熱装
 置の類に相当する部品は存在しない。

 ということは、消去法で考えて、蒸気レシプロ機関を指していると考えられる。


  疑問 4.3:駆動装置については、「主機関」と呼称されているが、通常、「主機関」と言
          えば、それに対する「補助機関」、補助動力装置(APU)といったものが装
          備されているのが普通である。この「保式加熱魚雷」の補助機関はどこにある
                  のだろうか?




 「図8-3 魚雷各部の名称(九三式酸素魚雷)」では、「加熱装置」と「主機関」の単語が
 消え、その代わり、「燃焼室」、「気筒」なる単語が登場する。

 「気筒」は、いわゆる「シリンダ」を指すが、外燃機関、内燃機関、油空圧モータなどに一般
 的に使われている。結局、「気筒」では具体的にどのような原動機を指すのか不明である。

 「酸素魚雷」は従来の魚雷の気室に蓄圧されていた空気を純酸素に変えたもので、基本的
 な駆動装置の機構は同一だったはずである。

 なお、図8-3では、従来の気室が第二空気室となっているが、「第二空気室(液体酸素)室」
 と表記されている。さすがにこの表記は、「第二空気(液体酸素)室」の誤植であろう。


 疑問 4.4:「第二空気(酸素)室」と書けば、気体としての酸素であるが、わざわざ、
        「(液体酸素)」と書いている以上、液体燃料ロケットの酸化剤として使われ
        る、あの液体酸素を念頭に置いたものだろう。
              「幻の秘密兵器」(近代戦史研究会編)でも指摘したが、当時の日本で艦
        船や潜水艦で液体酸素を運用できたのだろうか?

 疑問 4.5:圧縮酸素を加熱室に送るにはバルブを開けるだけで済むが、液体酸素を圧送
         するには、圧送用の窒素ガスタンク、または、タービンポンプとその駆動装置の類
         が必要である。しかし、図には、そのような装置の記載は一切ない。 超低温の
         液体酸素をどうやって燃焼室まで圧送するつもりなのか?


  本書は、第二次大戦で使用された旧日本軍の駆逐艦の細部形状について解説することを
  主目的としてしており、魚雷については、参考程度の扱いである。

  酸素魚雷については、現代の液体燃料ロケットが液体酸素を使用していることから単純に類
  推して、液体酸素を使用していると記載したと考えられる。

  なお、資料技術としての価値はともかく、魚雷の断面図と構成部品の名称が記載されており、
  解析の参考には使えたことを付記しておく。



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