[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

酸素魚雷

結論









  
  5. まとめ


 
                【 九三式魚雷断面図:全体 】


 
               【 九三式魚雷 断面図 : 後部 】


 
                【 九三式魚雷断面図 : 後部 】


    5.1  酸素魚雷のメカニズム

  ・ 燃焼器内で酸素と灯油を燃焼させ、その燃焼ガスに海水を噴射して蒸気を発生させる。

  ・ 海水は外部から海水ポンプで取り込まれ、燃焼器と燃料タンクに圧送される。

  ・ 燃料タンク内は二重構造となっており、圧送された海水が燃料分離器を膨らませること
     で、タンク内の燃料が押し出される。

  ・ 従来の清水に変えて海水を使用するのは、増設したシステム部品のスペース確保のた
    めに、清水タンクを廃止したためである。

  ・ 二重反転スクリューは、クランク式ガス圧モータで駆動されるが、往復動単気筒タイプを
      2基直列に繋いだ形で使用される。

  ・ 高圧酸素を充填した圧縮酸素タンクとは別に、始動用の圧縮空気タンクを装備してい
      る。

  ・ 魚雷の作動は、一番最初に圧縮空気の圧力のみで起動され、次に、空気と燃料の燃
     焼ガスに海水を噴射して発生させた蒸気で駆動、その後、徐々の酸素濃度を上げてい
      き、最終的に蒸気と二酸化炭素ガスのみとなる。

  ・ 酸素はパイプ内のわずかの油分とも反応するため、魚雷の制御用として、別に圧縮空気
   タンクが必要となる。




    5.2  酸素魚雷 その後

  第一~第四世代の魚雷に共通する特徴は、いずれも、動力発生に使用したガスを水中に
  放出していることである。これは、排気ガスの圧力が周囲の水圧よりも高いことを意味する。

  一方、水深が深くなれば水圧も上昇する。仮に、水圧が排気ガスの圧力を上回ってしまう
  と、排気ガスを水中に放出できないため、燃焼器内の燃焼も停止してしまう。

  『ソ連魚雷発達史』 によれば、酸素+灯油式のクランク式ガス圧モータ方式の場合、魚雷
  の作戦深度は、1~14メートルとなっている。
  さらに性能向上を図った、過酸化水素+灯油式のガスタービンエンジン方式では、作戦深
  度は、14~20メートルである。

  これに対して、電池式魚雷は、雷速、馳走距離とも熱空気式に劣るものの、作戦深度限
  界は200メートルという数値が記載されている。
  つまり、第一~第四世代魚雷は、海面下のごく浅い部分でしか馳走できないのである。

  さて、第二次大戦まで使われた潜水艦は実質、可潜艦の域を出ず、対水上艦戦闘が中
  心であった。

 ところが、第二次大戦後に発達した核動力潜水艦は、常時潜航可能な『真の潜水艦』で
  あり、潜水艦の攻撃目標も対潜水艦戦闘が主流となっている。

  そして、現在の潜水艦同士の戦いは、大深度で行われるため、水圧の影響を受けない電
  池式魚雷の方が有利なのである。

  一方、対水上艦用の魚雷については、酸化剤として、従来の圧縮空気、圧縮酸素に代
  わって過酸化水素液を使用するヴァルタータービンエンジン式の魚雷が開発されている。

  さらに、遠距離目標攻撃用として、魚雷の後端にロケットモータを装着することで、目標付
  近まで魚雷を飛翔させ、目標付近に着水後、分離した魚雷で攻撃する『サブロック』といっ
  た兵器まで実用化されている。

  かつて、 列強各国が開発に失敗した中で唯一日本だけが開発に成功し、圧倒的な馳走
  距離と速度で連合軍を驚かせた酸素魚雷であるが、より長距離の目標を高速で攻撃でき
  る魚雷が開発された現代においては、再復活の可能性はない、と言ってよいだろう。