酸素魚雷
連合艦隊潜水艦
6.1 「連合艦隊 潜水艦」 木俣滋郎著 広済堂出版 初版:1977年11月10日
著者:木俣滋郎
発行:広済堂出版
初版:昭和52(1977)年11月10日
90-95ページに九五式魚雷(酸素魚雷)の前身である八九式魚雷を解説している。
また、92-93ページ見開きで八九式魚雷の内部構造(イメージ)図が載っている。
八九式魚雷とあるが、なぜか、図は「九八式魚雷」となっている。これは明らかに誤植であろ
う。問題としたいのは、魚雷の原動機である。図では、単に「機関」となっている。
技術用語として用いる場合、「内燃機関」または「外燃機関」と明記しなければ意味がない。
なぜなら、両者の作動原理が全く異なるものだからである。
では、この謎の「機関」がいかなるものだったかは、91ページには次のように書かれている。
>魚雷は英人ロバート・ホワイトヘッドによって一八六六年(慶応三年)に
>完成されたもので、当時のものは圧縮空気によりピストンを動かし、速力六
>ノットで約六○○メートルの射程をもっていた。
「圧縮空気によりピストンを動かし」ということは、ピストン式空気圧モータを使っているというこ
とである。
>原動力はこのころにはホワイトヘッド式の圧縮空気によるものは影をひそめ、
>熱空気型にかわっていた。これは内燃機関の一種で、高圧空気を加熱室
>に送りこみ、ここに石油を噴射して点火爆発し、これに水を噴射してできた
>混合気をシリンダーに送りピストンを駆動させる方式である。
この記載を読む限りでは、ホワイトヘッド発明のピストン式空気圧モータから内燃機関の一
種に置き換わったようである。
しかし・・・・。
疑問 1.1:ガソリンエンジンのキャブレータ内で空気とガソリン細粒を混合すると、『混合気』
が出来るが、木俣先生によれば、空気と石油を燃焼させてできたガスに真水を
噴霧したものを混合気と呼ぶらしい。寡聞にして知らないが・・・?
疑問 1.2:加熱室に送りこんだ石油を点火爆発させるには、石油を断続的に供給しなけ
ればならない。(連続供給すれば、それはただの石油バーナーである。)
一方、断続爆発で発生した高温高圧の燃焼ガスに水を噴射すれば、燃焼ガ
スの温度と圧力が下がって、逆にパワーダウンすることになるが・・・?
疑問 1.3:木俣先生は「内燃機関の一種」と書いているが、原動機の歴史をひも解いてみ
ても、このような形式の内燃機関は存在しない。どのような根拠に基づいて、こ
う判断したのであろうか?
さらに、92ページ以下の説明では
>二、ピストン機関の構造。
>従来はシリンダー(気筒)を星型(一点を中心とした円型)に並べてい
>たが、これではピストンの行程が短く、発生エネルギィが少ないので、八九式
>魚雷はシリンダーを横に配置した。以後ほとんどの魚雷(九二式電池魚雷
>を除く)がこの機関形式となった。
>八九式蒸気(熱空気)魚雷は、イ一七四までの海大型潜水艦に搭載さ
>れ、イ一七四までの海大型潜水艦に搭載され、太平洋戦争初期まで使用
>された。イ三〇が昭和十七年にドイツへ行くとき、同艦は搭載していた機密
>兵器九五式酸素魚雷をおろして、わざと八九式の旧式魚雷をつんで行った。
>九五式酸素魚雷は極秘扱いだったのである。
と記載されている。
疑問 1.4:ここで初めて「八九式蒸気(熱空気)魚雷」という言葉が登場したが、「蒸気
魚雷」ということは蒸気機関、ということになる。前段の「内燃機関の一種」とは、
矛盾しているが・・・?
仮に、八九式魚雷を蒸気式魚雷として説明するのであれば、木俣滋郎氏の文章は以下の
ようになるはずである。
>原動力はこのころにはホワイトヘッド式の圧縮空気によるものは影をひそめ、
>熱空気型にかわっていた。これは外燃機関の一種で、高圧空気と石油を
>加熱室で燃焼させ、これに水を噴射してできた水蒸気をシリンダーに送り
>こみ、ピストンを駆動させる方式である。
本書は、1977年に出版され、酸素魚雷についてもかなり詳細に解説した資料ではあるが、
技術解説資料としてみた場合、すでにこの段階で間違いを含んでいた、と言うことであろうか。
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