酸素魚雷
パールハーバーの真実
6.6 「パールハーバーの真実」 兵藤二十八著 PHP文庫 2005年12月19日初版
著:兵藤二十八
発行:PHP研究所
初版:2005年 12月19日
太平洋戦争で活躍した「航空母艦,艦上攻撃機,航空魚雷」の3点セットについて、論
考した本である。従って、魚雷は、航空魚雷が中心であるが・・・
46〜47ページ
>第二次大戦中の日本海軍潜水艦の標準装備となった八九式魚雷(燃料はケロシン)の
>場葦、炸薬は296kg(二型)だ。じっさいに、米空母に命中し、撃沈に貢献している潜水
>艦用魚雷はすべて八九式であるから、この数値は重要だろう。
>潜水艦用には、「酸素+ケロシン」で走る九五式も開発され、その初期型397.4kg、最終
>型で550kgもの炸薬を充填していた。が、酸素魚雷は、加熱爆発事故の防止のため、油を
>塗ることができず、保管2か月で摺動部品が錆びついてしまった。
104〜105ページ
>発射の瞬間、魚雷の内部では0.1秒でジャイロが毎分4万回転に達し、それが、三軸の
>自律姿勢制御をし、水圧センサーと連動して、事前に調定された深度を維持して最期まで
>直進する。しかも、投下されると確実に一発でかかる超小型の「使い捨てエンジン」も搭載。
>2分間足らずの運転ながら、それはちゃんと清水によって冷却されるようになっていた。
>スクリュー・プロペラはトルクを打ち消すための2重反転式。ジャイロや内燃機関のスタ―ター
>と燃焼の継続と舵サーボの動力のための圧搾空気を封入しておく「気室」は、日本の場合、
>1箇1箇が職人の削り出しで、意外にもそれがメカの塊のような魚雷の中で一番高価なパ
>ーツであった。当時のピストンエンジンやタービンエンジンを内蔵した熱走式魚雷の基本性能
>は、気室中に何百気圧で助燃剤としての空気を閉じ込められるかに大きく左右されたが、
>冶金に弱い日本の技術陣はこれをアメリカのように鈑金溶接にできなかったのだ。
124〜125ページ(雷撃機への魚雷搭載法の説明)
>この際、以下の作業を分担で素早くやる。
>●架台の皮バンドで魚雷を縛る。
>●深度を5mとか6mとかに調定する。
>●各部のナットを締め付ける(防水のため)。
>●防水グリースを塗り付ける。
>●安定舵を装着する。
>●筐板を装着する。
>●清水、白鉱油(ケロシン)、圧搾空気を補充補給する。
と記載されてる。
疑問 6.1:現在、何の前提もなく内燃機関と書けば、それは、ガソリンエンジンやディーゼル
エンジンのようなレシプロエンジンを指すことになり、航空用の九一式魚雷の原
動機は、「ピストンエンジン」式の内燃機関」ということである。
他の資料によれば、九一式魚雷の原動機は星型8気筒形式であるが、星型
の4サイクルガソリンエンジンでは、7気筒、9気筒というように奇数気筒にしな
いとスムーズな回転が得られない。本当に星型8気筒内燃機関なのだろうか?
疑問 6.2:燃料は、『ケロシン(白鉱油)』と記載されている。現代の呼称では『灯油』の
一種である。灯油を燃料とする内燃機関は、単気筒汎用エンジンとして現実
に存在し、農作業などの用途で戦後の一時期盛んに用いられていた。
しかし、基本は単気筒の低出力機関であり、魚雷用として適当とは思えない
のだが・・・・?
疑問 6.3:本稿のテーマである魚雷の原動機とは直接関係はないが、航空機のような3次
元機動を行う移動体は、機首方向を軸とするローリング、主翼を軸とするヨ―イ
ング、ローリング軸とヨ―イング軸に垂直方向を軸とするピッチングの3軸の回転運
動を行う。当時の魚雷は、ヨ―イング(深度)とピッチング(方向)の2軸の制
御である。しかも、ジャイロはピッチングの制御のみである。
「ジャイロで3軸の自立制御云々・・・」というのは、現代のミサイルと勘違いして書
いているとしか思えない。
疑問 6.4:本稿のテーマである魚雷の原動機とは直接関係はないが、『深度調整用の水
圧センサ』搭載と説明している。 当時の深度調整機は、水圧(=深度)
変化を機械的なレバーの動きに変換し、このレバーが空気バルブを動かすこと
で、空気圧アクチュエータが魚雷の昇降陀を動かして一定深度を保つものであ
る。
いわば、メカ式フィードバック方式とでも言うべきものであり、現在のように電子制
御装置がセンサの入力信号とアクチュエータの出力信号を比較してフィードバッ
ク制御しているわけではない。
安易に『水圧センサー』などと書くと余計な誤解を与えかねないのではないか?
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