酸素魚雷

酸素魚雷は決戦兵器たりえたか










    6.7  「酸素魚雷は決戦兵器たりえたか」 瀬戸利春 (歴史群像)

     

  著者:瀬戸利春 ; イラスト:藤井祐二
    歴史群像 No.76  2006 4月号 (学研)

 帝国海軍の「酸素魚雷」偏重主義がどのような影響を与えたか、について検証したものであ
 るが、概略の魚雷の開発史と構造について記述されている。

 ホワイトヘッド式魚雷については

>ホワイトヘッド魚雷は高圧空気の力を利用して、
>11ノットで610メートル進むという、いたって低性
>能なものだったが、

 と、記述され、ホワイトヘッド式魚雷が、圧縮空気を利用していることを明記している。

 

 ただし、図では駆動装置は『空気回転機』となっている。

 空気圧機器の世界で空気回転機と言えば、コンプレッサー(圧縮機)と空気圧モータ(ア
 クチュエータ)の2つの意味があり、低回転高トルク型、高回転低トルク型などさまざまな種
 類がある。『空気回転機』は工学的にかなり微妙な表現である。


 

  また、『九三式魚雷』の断面図も掲載されているが、よく見ると、構成部品の名称について
  誤っている部分がある。

  酸素魚雷を量産配備した時、当時の海軍当局は、機密保持の観点から「酸素」という名
  称を使わず、『第二空気』と呼称とした話は有名であるが、掲載図では『第一気室(酸素
  タンク)』、始動用の圧縮空気タンクを『第2気室(圧搾空気タンク)』という名称になっ
  ている。

 この種の表記は取り扱いの初歩的ミスを減らすため、名称を一致させるのが基本であり、普
  通の空気は第一空気室、第二空気(酸素)は第二空気室となるはずである。

  また、断面形状から想像すると、燃料タンクはドーナツ状のタンクに入っているらしい。これで
  十分な燃料容量を確保できるのであろうか?


 一方、本文にも微妙な表現が見られる。

>圧搾空気を利用する場合、空気の温度を高めると効率が良い。例えば、理論的には
>一五度の空気を四五○度に熱することができれば、能力は四倍となる。
>そこで、一九○一年、過熱装置を付けた魚雷が開発された。以後、旧来の空気魚雷
>を冷走式、過熱装置を付けた後の魚雷を熱走式と区別するが、現在ではすべて熱走
>式と電池式である。
>ところで、どうせ燃焼させるなら、エンジンを搭載した方がより効果的ということで、エンジン
>を駆動する魚雷が生まれた。空気を貯めた気室は以前と同じく残されたが、圧搾空気
>の役割は空気の膨張エネルギーを動力源とするためのものから、燃料を燃焼させる酸化
>剤へと役割を変えたのである。

 まず、わざわざ「空気の温度を高めると・・・」云々と書いているいうことは、ブレイトン機関のよ
 うな原動機を想定していると読み解くことができる。

 次に、現在の使用されている魚雷は、空気を加熱する「過熱装置」(加熱装置の間違いか
 ?)を付た熱走式魚雷と、電池を使った魚雷の2種類がある、と述べている。

 ところが、「エンジンを搭載した・・・」云々の文章は、魚雷がガソリンエンジンなどの内燃機関で
 駆動すると考えているとしか読み取れない。

 ということは、熱走(=熱空気機関)式、電池式、内燃機関式の3種類の魚雷が存在する
 ことになり、 「現代ではすべて熱走式と電池式・・・」の文章と矛盾している。

  本書の要旨は、あくまでも酸素魚雷の運用に関してであり、結論についても、それなりに納得
  できるものである。それだけに、技術解説が稚拙なのが残念ではある。




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