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3.3 「九三式魚雷一型」の管系統図
3.3.1 「九三式魚雷一型」管系統図の解析
下図は、「コンバットAtoZシリーズ 4 図解 海軍水雷戦隊」に掲載されている九三式魚雷
の管系統図である。九○式、九一式の管系統図に比べてかなり簡略化して描かれている
ことがわかる。
ここで注目すべき点は「海水ポンプ」である。九三式魚雷は、燃焼の酸化剤として空気では
なく純酸素を使用している。このため、従来の空気式魚雷に比べてより長時間燃焼させること
が可能となったが、その一方で、搭載燃料、清水もそれに見合った量が必要となる。
その反面、駆逐艦や潜水艦で運用可能な魚雷のサイズには限界があるため、どこかにしわ
寄せがいくことになる。
搭載燃料は削減できないが、清水の代わりに魚雷の周囲に豊富に存在する海水を取り入
れることで、清水タンクを廃止することができる。
問題は、燃焼器内に海水を噴射すると内部に塩化物が析出することであるが、対策とし
て燃料(ケロシン)に添加物を加えて析出を防止した、という説がある。
この説は現段階では、関連資料や関係者の証言の裏付けがないため、一応参考程度
としたい。
さて、九三式魚雷から導入された海水ポンプシステムであるが、海水ポンプの系統をたどって
みると、「燃料室」と「主機械」に向かっていることが判る。
燃料室内に海水を送りこんでも海水と燃料が撹拌されるだけであり、海水と燃料の混合液
を燃焼器に送りこむことは燃焼上不利となる。
ここで、酸素魚雷の断面図を見ると、第二空気室と燃料室の間に「燃料分離器」なるもの
が存在している。例えば、燃料分離器がゴム製の隔壁のようなものであり、海水ポンプから
送り込まれた海水によってこの分離器が膨張し、結果的に燃料が送り出させる方式である
と考察してみた。そこで、『酸素魚雷発動装置原理図』 改訂版では、海水を燃料分離器
に送りこむ形に変更した。
次に、海水が 「主機械」に送りこまれていることであるが、九三式魚雷のベースとなった九○
式魚雷では、「清水タンク」から出た清水は燃焼器に送りこまれており、配管が異なっている。
九○式魚雷の清水タンクを廃止し、代わりに海水を取り入れたのであれば、海水の配管は、
過熱装置に繋がっていなければならない。そこで、改訂版では、海水の配管系を修正した。
「コンバットAtoZシリーズ 4 図解 海軍水雷戦隊」の酸素魚雷発動装置原理図を修正し
たのが、下図である。
1) 起動弁
原理図では、空圧部品の「作動弁」記号が描かれている。作動弁は、機械的に弁を開閉
して、空気圧を制御するものである。本稿では、魚雷用ということで、「起動弁」と呼称する。
「起動弁」は3か所に配置されているが、実際の配管では、3つワンセットで置かれているは
ずである。おそらく、3つの起動弁を開閉するレバーの突起が発射管内の溝に嵌まっていて、
空気圧で魚雷を発射すると、突起が溝から外れて押し込まれ、結果として、起動弁が開状
態となる、と推察する。
2) 調圧弁
元の「原理図」では、「主調和器」と記載されている。圧縮空気タンクには200気圧程度の
空気や酸素が充填されているが、直接燃焼器に送りこむと、ロウソクの火を吹き消すのと同
じことになる。そこで、燃焼器に送る空気や酸素の圧力を下げて、燃焼器内の安定燃焼を
維持するのである。現代の空圧部品では、「圧力調整弁」、通称「調圧弁」に相当するの
で、以後、「主調和器」は「調圧弁」と呼称する。
3) 調整弁
燃焼器内に吹き込まれた空気(酸素)燃料が燃焼すると高温の燃焼ガスが発生するが、
そこに海水を噴霧すると、急激に蒸発して、高温高圧の蒸気が生成される。この蒸気が横
型複動ガス圧モータを作動させるのであるが、ガス圧モータが発生可能な動力以上の蒸気
圧を供給しても、燃焼器内の蒸気圧が高まるだけで、余計なエネルギーロスが発生してしま
う。それを防ぐには、燃焼器内の蒸気圧に応じて、空気(酸素)、燃料、海水の流量を調
整する必要がある。元の図では「発停装置」と記載されているものがそれに相当すると考え、
「調整弁」と呼称する。
なお、九○式、九一式では、調整弁ひとつで、空気、燃料、清水を調整していたが、九一
式では、空気(酸素)のみ調整するようになっている。これは、蒸気圧増大→調整弁作
動→空気(酸素)量減少→蒸気圧低下→横型複動ガス圧モータ回転数低下→海水ポ
ン回転数低下→海水流量低下→燃料流量低下 と、いった一連のプロセスによるフィード
バックが働いていると考えることができる。
4)海水緩衝器
海水ポンプの構造が不明だが、おそらくガス圧モータの出力軸で作動するピストン式ポンプだ
と推定される。ピストン式ポンプでは、圧送量が周期的に変動(脈動)するため、安定して
圧送するために、脈動を平準化する必要がある。そのためにピストンから圧送された海水を
一旦、内部を空気で加圧したタンク内に送る。脈動は内部の空気圧変動に変換されるの
で、結果的に圧送時の圧力変動が消滅する。現在、油圧機器で使用されている『緩衝器
(アキュムレータ)』に相当する。そこで、本部品の名称は、元図の表記に従うことにした。
3.3.2 「九三式魚雷一型」の起動
(1)起動開始段階
配管図では、起動弁は3か所に分散配置されているが、実際には3つの起動弁がワンセッ
トで配置されており、レバーひとつで3つまとめて開閉可能となっているはずである。
魚雷を発射管にセットすると、発射管内の突起がレバーに引っかかる。
魚雷が圧縮空気で発射管から押し出される際、発射管内の突起がレバーを動かすため、
起動弁は開となり、第一空気圧縮タンクからは通常の空気が流れ出す。
圧縮空気は調圧弁を通過する過程で、蓄圧200気圧が適切な圧力に減圧されて燃焼
器内に流れ込むが、初期状態ではそのまま素通りして、横型複動ガス圧モータが空気圧
で作動を開始する。(冷走状態)
複動ガス圧モータを駆動した圧縮空気は海中に排出されるが、通常の空気なので、航跡
が海中に残ることになる。
(2)スクリュー作動段階
冷走状態で横型複動ガス圧モータのクランクシャフト回転すると、連動して海水ポンプも作
動を開始する。外部から取り込まれた海水は、一旦海水緩衝器に送られた後、燃焼器、
燃料分離器へ圧送される。
(3)燃料系作動段階
燃料分離器は、ゴムのような柔軟素材でできており、海水ポンプから圧送された海水が入っ
て膨らむと、その分だけ燃料(ケロシン)が流出する。
(4)蒸気発生段階
燃焼器内に噴射された第一空気(通常の空気)と燃料(ケロシン)が、燃焼器内にあ
る点火装置で着火し、高温高圧の燃焼ガスが発生する。そこに、海水ポンプで圧送された
海水が噴射されるが、海水は高圧の蒸気に変わる。
高圧蒸気は複動ガス圧モータを作動させた後、海中に排出されるが、この段階では、燃焼
に関係のない窒素ガスが含まれているので海中に航跡が残ることになる。
一方、第二空気(酸素)が第一空気タンクに流入することで、第一空気タンクの酸素濃
度が徐々に上昇していく。
(5)純酸素燃焼段階
第一空気タンク内では、本来蓄圧していたの空気が消費される一方、流入が続く第二空
気(酸素)で満たされるので、燃焼器内でも空気と燃料の燃焼反応から酸素と燃料の燃
焼反応に変わっていく。燃焼ガスは二酸化炭素と水なので、海中に排出されると海水中
に溶け、航跡は見えにくくなる。
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