酸素魚雷

九一式魚雷












    3.1  「九一式魚雷」の管系統図


    3.1.1  「九一式魚雷」管系統図の解析

  下図は、「コンバットAtoZシリーズ 4 図解 海軍水雷戦隊」に掲載されている九一式魚雷
 の管系統図である。

  

  この「 図解 海軍水雷戦隊」版九一式魚雷の管系統図を解析した結果が下図である。

  

 各部の名称については、現代使用されている工学系の名称、もしくは、実際の機能から適
  正と思われる名称に改めた。名称の比較した一覧表を下に示す。


 

 1)  「○○室」
  部品呼称であるが、「○○室」という呼称が多い。魚雷はある種潜水艦と同様の構造であ
  り、頭部、機関室、後部浮室といった部分に分けることができる。その意味で、機関室内に
 機械室があるというのは明らかにおかしい。住宅で言えば、「キッチンルーム」の中に「グリルル
  ームがある」というようなものである。そこで、機能面から現代で通用する呼称に変更してあ
 る。

  2)  縦舵・横舵
  魚雷の説明図では、縦についている方を「縦舵」、横に付いている方を「横舵」と呼んでいる。
  ところが縦舵は左右方向、つまり横方向の動きを制御し、横舵は、上下方向、つまり縦方
  向の動きを制御しており、呼称と機能が一致していない。
  そこで、本稿では、航空機に準じて、縦舵を「方向舵」、横舵を「昇降舵」と呼称する。

  3) 縦舵機シリンダ
  長方形のシンボルに「縦舵機シリンダ」という呼称が付いているが、機能から考えれば、「方
  向舵アクチュエータ」と呼ぶのが適切である。「横舵機シリンダ」の文字が見えないが、配管
 図から見て、右下方にある2つの長方形がそれに当たると考えてよい。
  また、空気圧アクチュエータの記号をアクチュエータのシンボルに変更した。

  ところで、「昇降舵アクチュエータ」が2つあるということは、本来、「方向舵アクチュエータ」も
  2つ必要なのだが、実際に1つで済ませているのか、省略したのかは不明である。
  本稿では、引用図を尊重した。

 4)縦舵機と安定機
 同一のシンボルに異なった呼称が使われているが、その機能は、深度や方向を維持するた
 め  アクチュエータの作動方向、つまり圧縮空気を送る方向を決めるバルブと考えて良い。
  そこで、「方向舵制御弁」、「昇降舵制御弁」と呼称することにした。

 5)冷却ポンプ
 星型8気筒モータ中心にあるクランクシャフトに描かれていることから、クランクシャフトの回転
  で駆動されるポンプであると推測される。図中には、「冷却ポンプ」と記載されているが、配管
  系をたどると、オイル循環系に繋がっているので、「オイルポンプ」に訂正した。


  なお、図中にある緑色文字の部品呼称は、機能面から推測した仮呼称であり、間違って
  いる可能性があることも付記しておく。



    3.1.2  「九一式魚雷」管系統図:アクチュエータ系統

  九一式魚雷は、雷撃機用の魚雷であるため、駆逐艦、潜水艦用の魚雷のような長距離
  の馳走性能は要求されない。 そのため、圧縮空気タンクが動力用とアクチュエータ駆動用
  を兼用する方式となっている。

  起動弁はばねの作用で常時開となっており、初期状態はピン等で閉状態で留められている。
  ピンはワイヤ等で機体に留められているので、魚雷が雷撃機から投下された瞬間、ピンが引
 き抜かれて、起動弁が開となり、圧縮空気タンクに蓄圧された135~180気圧の高圧空気
  が流れ出す。

  起動弁出口でアクチュエータ系配管は2系統に分割される。
  ひとつは、ジャイロスコープに向かう管路で、超小型の空気圧モータでジャイロスコープを高速
  回転させた後、燃焼器に流れ込む。

  もうひとつは、アクチュエータ駆動系への管路である。ここまで圧縮空気は乾燥状態であるが、
  アクチュエータ駆動を円滑にするため、ルブリケータという装置で圧縮空気に微量のオイルを
  混入しているはずである。

 水圧感知メカ、昇降弁、昇降制御弁、昇降舵アクチュエータの作動メカニズム、また、ジャ
  イロ、方向弁、方向制御弁、方向舵アクチュエータの作動メカニズムについては、「魚雷の
  自動制御」を参照のこと。


    → 魚雷の自動制御


 


    3.1.3  「九一式魚雷」管系統図:オイル循環系統

 往復動機関はピストンとシリンダが摺動運動部分、クランクシャフトと軸受部分にオイルを供
  給して潤滑しないと焼き付いてしまう。このため、摺動部分にオイルを供給する必要がある。

  オイルはポンプで各部を潤滑した後、リザーバタンクに戻るが、消費された分はオイルタンクか
  らリザーバタンクに供給される。そのために、圧縮空気が使われるが、蓄圧された145~180
  気圧の高圧空気を直にオイルタンクに加えると、オイルが噴き出すことになる。

  そこで、圧縮空気タンクの高圧空気を調圧弁に通して減圧し、低圧圧縮空気でオイルタン
  クを加圧するようになっている。

 


    3.1.4  「九一式魚雷」管系統図:燃料供給系統

  次は、燃料供給系である。圧縮空気タンクは調整弁と繋がり、分岐した圧縮空気は燃料
  タンクに送られる。圧縮空気によって押し出された燃料は、燃焼器へ送られる。

 


    3.1.5  「九一式魚雷」管系統図:清水供給系統

  清水供給系である。清水タンクも調整弁から分岐した圧縮空気によって押し出され、燃焼
  器へ送られる。

  清水タンクのシンボル図は、二重構造となっているように見える。燃焼器で発生した高温の
  ガスを清水タンクの二重壁に送って清水を暖めている構造だと推測できる。
 ただし、清水タンク関連の詳細な資料がないため、引用図のままとした。

 


    3.1.6  「九一式魚雷」管系統図:空気供給系統

  燃料を燃焼させるためには空気(酸素)が必要である。圧縮空気タンクには145~180
  気圧の高圧空気が蓄圧されているが、ダイレクトに燃焼器に送っても高速噴流となるため
  燃焼が安定しない。そこで、調圧弁で減圧して噴流の速度を下げ、安定燃焼が継続する
  仕組みとなっている。

 


    3.1.7  「九一式魚雷」管系統図:蒸気供給系統

  圧縮空気と燃料が燃焼器内で燃焼し、そこに清水が吹きこまれることで大量の蒸気が発生
  する。発生した蒸気は、星型8気筒ガス圧モータに送られ、クランク軸の回転出力に変換さ
  れる。このクランク軸がスクリューを回転させることで、魚雷が水中を航走する。

  空気、燃料、清水は空気圧により燃焼器に送られるため、ガス圧モータが消費する蒸気量
  とは無関係に蒸気が発生することになる。そのまま燃焼器内の蒸気圧が高まって、空気圧
  を越えると、燃料の供給が絶たれ、燃焼器内の燃焼も停止してしまう。

  そこで、燃焼器内で発生する蒸気の一部は調整弁に送られ、蒸気圧が設定値を越えると
  調整弁が圧縮空気の供給を絞る一種のフィードバック制御をしていることが、この配管図か
  ら読み解くことができる。
 

 




 ←BACK                                   HEAD                                   NEXT→