酸素魚雷
方向制御
8.2 魚雷の方向制御
魚雷は、基本的に発射した方向に向かって直進するが、遠方の目標を攻撃する場合には、
海流、他の艦船の航行波などの外乱の影響を受けるため、発射方向をそのまま維持すると
は限らない。そこで、外乱によって魚雷の進路が乱されても、進路を修正して元に戻す装置
が必要となる。
・ ジャイロ:高速回転すると自律安定する一種のコマである。
・ 空圧タービンモータ:高圧空気を羽根車にぶつけてジャイロを高速で回転させる。排出
口は燃焼器に繋がっており、燃焼の酸化剤として利用される。
・ ジャイロベース:高速回転するジャイロを支えるケースであるが、プッシュロッドを接合して
ジャイロの位相差を伝達する。
・ 基台:魚雷本体に取り付けられ、軸受を介してジャイロベースを支えており、ジャイロを
常時一定方向に保つ。
・ プッシュロッド:ジャイロベースの動きに応じて水平方向に動く。
・ 方向弁:プッシュロッドの動きに応じて弁が開閉し、圧縮空気を送りこむ。
・ 方向舵制御弁:上下にある方向弁の開閉に応じて、方向舵アクチュエータの作動方
向を決定する。
・ 方向舵アクチュエータ:圧縮空気の圧力を左右方向の動きに変換する。
・ 方向舵:魚雷の横方向の動きを制御する。方向舵が右(上)側に動くと魚雷は頭部
を右(上)側に向ける。左(下)側に動くと頭部を左(下)側に向ける。
1) 魚雷が左にズレた場合
魚雷が船首波等の外乱によって、魚雷の進行方向(青矢印)が左を向いた場合でも、ジ
ャイロの回転方向は維持される。このため、魚雷に固定された基台は魚雷と同じ方向を向く
が、軸受でフローティング保持されているジャイロベースは、ジャイロの作用により目標進路(
赤矢印)を保持する。相対的に赤矢印と青矢印の角度分だけ、右側の方向弁が押される
ことになる。
右側の方向弁が開くと、高圧空気が方向制御弁に流れ込み、右側の小ピストンを押す。
すると、制御弁のピストン全体が左側に移動し、高圧空気は方向舵アクチュエータを作動さ
せる。方向舵が右側に動くことで、魚雷頭部は右側に移動する。
魚雷の進行方向(青矢印)と魚雷の目標進路(赤矢印)が一致すると、開いていた方
向弁が閉じ、方向舵制御弁のピストンはばねの力で中立位置に復帰する。方向舵制御弁
と方向舵アクチュエータを繋いでいた接続口は大気解放されるので、方向舵も中立位置に
戻る。
2) 魚雷が右にズレた場合
魚雷が船首波等の外乱によって、魚雷の進行方向(青矢印)が右を向いた場合でも、ジ
ャイロの回転方向は維持される。このため、魚雷に固定された基台は魚雷と同じ方向を向く
が、軸受でフローティング保持されているジャイロベースは、ジャイロの作用により目標進路(
赤矢印)を保持する。相対的に赤矢印と青矢印の角度分だけ、左側の方向弁が押される
ことになる。
左側の方向弁が開くと、高圧空気が方向制御弁に流れ込み、左側の小ピストンを押す。
すると、制御弁のピストン全体が右側に移動し、高圧空気は方向舵アクチュエータを作動さ
せる。方向舵が左側に動くことで、魚雷頭部は左側に移動する。
当時の魚雷がどのようにフィードバック制御を行っていたかについては、参考資料が見つからな
かったため、 「九一式魚雷 管系統図」に記載されている空気圧制御機構と、現在、使用
されている、油空圧機器のアクチュエータの制御回路から、魚雷の方向制御について、推測
してみた。基本は、深度制御機構と同じである。
さて、ナチス・ドイツが開発した弾道ミサイル ” V-2 ” には、3つの加速度センサでX軸、Y軸、
Z軸方向の加速度を検出し、得られたデータを2重積分して各方向の移動量が算出する
慣性航法システムが採用されていた。
その後、ミサイルなどの誘導兵器には、慣性航法システムを利用して目標と現在位置との差を
計算し、アクチュエータで舵を動かして差を補正する制御システムが使われている。
一方、現代の電子制御式に比べて精度は劣るが、ジャイロを利用した当時の機械的な制御
システムでも、フィードバック制御が可能ということである。
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